農地の利用と農地法

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家を建てるために土地が必要となった場合、土地所有者から土地を買ったり、借りたりすることになりますが、その売買、賃貸について国や地方自治体の許可を取得する必要はありません。したがって、売主や貸主と合意さえすれば自由に取引ができます。

しかし、農地に関しては全く状況が異なっています。それは、農地法が農地の利用について規制しているためです。

農地法の目的

農地法は、農地の売買や賃貸借、農地を農地以外に利用することについて厳しい規制をしていますが、なぜ宅地などと異なる厳しい規制をしてるのでしょうか。まず、農地法が何のために作られたのかを確認してみましょう。

農地法第1条は、以下のとおり農地法の目的について規定しています。

この法律は、国内の農業生産の基盤である農地が現在及び将来における国民のための限られた資源であり、かつ、地域における貴重な資源であることにかんがみ、耕作者自らによる農地の所有が果たしてきている重要な役割も踏まえつつ、農地を農地以外のものにすることを規制するとともに、農地を効率的に利用する耕作者による地域との調和に配慮した農地についての権利の取得を促進し、及び農地の利用関係を調整し、並びに農地の農業上の利用を確保するための措置を講ずることにより、耕作者の地位の安定と国内の農業生産の増大を図り、もつて国民に対する食料の安定供給の確保に資することを目的とする。

この条文は非常に長く、一読しただけでは何を言っているのかわかりにくいかもしれません。農地法の目的のポイントを簡潔にまとめると以下のようになります。

①農地は限りある大切な資源であるから、

②農地を農地以外に利用することを規制し、かつ

③農地の効率的な利用のための取得を促進するなどの措置を講ずることによって、

⇒農業者の地位を安定させ、農業生産を増大させることで、

⇒食料の安定供給を確保する。

このように、農地法は、農地の利用を規制し、効率的利用を促進することによって、食料の安定供給を確保するための法律です。

農地法による農地に関する規制は厳しいものですが、それらの規制はすべてこの目的を達成するためのものなのです。

農地法による農地利用の規制

農地を売買したり賃借したりする場合や農地を農地以外に利用しようとする場合には、農業委員会の許可が必要です。

農地売買・賃借の許可

農地を売買しようとしたり、賃借しようとしたりする場合には、その農地がある市町村の農業委員会の許可が必要です。これは、農地法第3条に規定されていることから、農地法3条許可と言われています。

農地を売買したり賃借したりしようとする場合には、農地のある市町村の農業委員会に農地法3条許可の申請を行うことになります。農業委員会では、農地法に定められた条件を満たしているかをチェックして、許可の可否を決めます。

許可申請から許可までの期間は、それぞれの農業委員会の状況にもよりますが、おおよそ30日程度です。したがって、農地の売買や賃借をする場合には、この農業委員会の許可に必要な期間もスケジュールに入れる必要があります。

農地法3条許可の申請書等は、市町村のホームページに掲載されていることも多く、必要な手続きについても市町村の担当窓口に問い合わせれば答えてくれます。

なお、農地を売買・賃借しようとする個人や法人には、農地のすべてを効率的に利用することや農業に従事していることなどの条件がありますが、この条件については、“農地所有適格法人と農業への参入”で解説しています。

農地の転用の許可

農地を農地以外のもの(宅地など)にすることを農地の転用といいます。農地の転用は自由に行うことができず、都道府県知事等の許可が必要です。(申請窓口は、市町村の農業委員会です。)

農地転用についての許可には2種類あります。一つは、自らが所有する農地を農地以外のものにする場合のもので、これは農地法第4条に規定されていることから、農地法4条許可と言われています。

もう一つが、農地を宅地などの農地以外として利用するために売買する際に必要な許可で、これは農地法第5条に規定があるため、農地法5条許可と言われています。

許可の条件については、①立地基準と②一般基準がありますが、①立地基準は農地の転用によって農業上の利用に支障が生じないようにするための基準です。例えば、農用地区域内農地(市町村が定める農業振興地域整備計画において農用地区域とされた区域内の農地)の場合には、原則として転用が認められません。一方で、鉄道の駅が300m以内にあるといった市街地の区域にある農地であれば、原則として転用が許可されます。

②一般基準は、立地基準以外の基準であり、申請目的実現の確実性(例えば、土地の造成だけを行う転用は不許可とされます。)などから転用の可否が判断されます。

まとめ

このように、農地法は農地の取得や転用を許可制にすることで、優良農地を確保して効率的利用を促進することにより、農業生産を増大させ、食料の安定供給を確保しようとしています。

農地法に基づく許可を取得する以外にも、農地の売買や賃借をする方法はありますが(農業経営基盤強化促進法など)、農地の利用については農地法が基本となっていますので、農地を利用する場合には農地法の理解が重要です。

 

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