農産物の輸出販売の方法と契約

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農産物輸出

農業ビジネスの海外展開の方法の一つは、海外への輸出販売です。この方法は、日本国内で生産した農産物を海外に輸出し、海外で販売するというものです。

日本国内の取引と比べても、販売の場所が異なるだけとも言えますので、シンプルで簡単なようにも見えます。しかし、実際に海外に輸出するとなると、海外までの輸送手段、通関・検疫、現地での販売チャネルの確保といった国内販売とは異なるハードルがいくつもあります。

輸出販売のルート

農産物の輸出は、一般的な工業製品の輸出以上にハードルが高いものです。それは、農産物であるがゆえに、輸出検疫や輸入検疫、衛生証明などが必要であったり、国ごとに輸出できる農産物が異なっていたりするためです。

農産物を輸出するためにはこのようなハードルを一つ一つ越えなければなりませんが、このような経験のない農業法人・農業経営者が自ら全てクリアしていくことは、容易ではありません。

そこで、多くの場合に農産物の輸出業務に経験のある事業パートナーと契約を締結し、協力して農産物を輸出しています。この事業パートナーとは、例えば輸出を扱っている商社などです。

さらに、事業パートナーには得意分野、専門分野がありますので、農産物が出荷されてから外国の消費者の食卓に乗るまでには、輸出パートナー以外にも事業パートナーが必要になります。

日本国内で輸出パートナーを確保しただけでは、海外で農産物を売ることはできません。このパートナーが輸出先で輸入事業や卸売事業を展開していれば別ですが、そのような例は多くありませんので、輸出先での輸入パートナーや卸売事業パートナーも必要になります。場合によっては、農業法人や農家自らが小売店を開拓していくことも必要になるかもしれません。

以下のとおり、農産物を輸出する場合、農業法人・農家から外国の消費者に農産物が届くまでに、多くの事業者を経ることとなります。

農産物輸出

このうち、農業法人・農家が直接契約を締結するのは国内輸出パートナーであり、その他のパートナーとの契約を締結せず、全てそれぞれの事業パートナーに任せる方法でも海外輸出をすることは可能です。

しかし、国内輸出パートナーに農産物を出荷するだけで、その後の販売について全て国内輸出パートナーやその他の事業パートナーに任せてしまうのではなく、生産者である農業法人・農家は輸出先での販売にも積極的に関与するべきです。

そうすることで、輸出した農産物の販売拡大のための戦略に沿って販売の拡大を目指すことができます。全てを事業パートナー任せにしてしまうと、高級品として売り込むつもりであったにもかかわらず、安売店でセール品として売られるなど、ブランド戦略とは合わない売り方をされてしまい、海外販売がうまくいかなくなることがあります。

そのため、海外で販売する際には海外での売り方にも積極的に関与し、ブランド戦略・販売戦略に見合った方法で販売の拡大を目指すようにすることが必要です。

事業パートナーとの契約

国内取引であっても契約書を締結するべきですが、海外への輸出の場合には日本国内と商慣習や法制度も異なりますので、国内取引以上に想定できないリスクが潜んでいる可能性があることから、事業パートナーと契約書を締結することは必須です。

農産物を輸出するために国内輸出パートナーを確保した場合、まずそのパートナーと契約を締結することになります。

この契約は、国内輸出パートナーとの売買契約といった形を取ることになることが一般的です。もっとも、国内輸出パートナーが全て買い取るという一般的な売買契約の場合もありますが、委託販売のような形を取ることもありますし、売買契約としては国外のパートナーと締結し、国内の輸出パートナーは輸出の手続きだけを行うといった形もあります。このように、契約の形態はいろいろなものがありますので、国内輸出パートナーの役割をよく協議して契約内容を決めることが重要です。

重要なことは、国内輸出パートナーに出荷したら後は一切関与できないという契約内容とするのではなく、輸出先での販売方法等についても積極的に関与できるようにして、指示や協議ができるようにしておくことです。

日本から輸出した農産物の現地での販売価格は、もともとの価格が外国産(特にアジア諸国産)に比べて高いうえに、輸送や関税等の費用がかかったり、農業法人・農家から消費者に農産物が渡るまでに複数の事業パートナーが関与するといった事情から、日本国内での販売価格の数倍になることが通常です。さらに、現地で生産された農産物の販売価格と比べると、その価格は10倍以上になることもあります。

このように、通常、輸出先では日本産の農産物は高級品であり、それでも買ってもらえるためのブランド戦略・販売戦略が欠かせません。そのためには、売り方や価格は非常に重要なポイントになります。

そのため、輸出先での売り方などについても、積極的に関与できるような仕組み作りが必要であり、その仕組みを契約の中に入れていくことが必要です。

具体的には、国内輸出パートナーとの契約において、輸出先を特定することはもちろん、輸出先での事業パートナーとの契約にも関与できるような規定を設けたり、輸出先での事業パートナーと直接覚書や合意書などを締結して、パートナーとして協力して販売していくことを合意するといった方法があります。

どのような方法が適しているかは、生産者である農業法人・農家の販売戦略や事業パートナーの意向・役割に応じて決めていくことになります。

さらに、事業パートナーと協力しながら、現地の法規制についても調査・把握しておくことも重要です。そうすることで、思いもよらないリスクが現実化する可能性を回避することができます。

国などのサポート

国は日本の農産物を輸出する事業を推し進めています。そのため、農水省、JETRO、各地のJAなどが輸出をサポートする体制を整えています。

国などのサポートや輸出のための情報については、以下のリンク先のホームページをご覧ください。

 

「農林水産物・食品の輸出促進対策」(農水省)

http://www.maff.go.jp/j/shokusan/export/

「農林水産物・食品の輸出支援ポータル」(JETRO)

https://www.jetro.go.jp/agriportal/

「輸出ワンストップ窓口」(JA)

https://agri.ja-group.jp/export/

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