農業ビジネスのブランド戦略

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ブランド戦略

世の中にはブランディングやブランド戦略について書かれた本、ネット上の記事があふれていますが、それはなぜでしょうか。

今、世の中にはモノやサービスがあふれかえっており、一見するだけでは違いがわかりません。そのため、多くの企業はブランディングを製品の品質と同等かそれ以上に重視しており、ブランド戦略について解説した本や記事があふれかえっているのです。

このことは、農産物にとっても全く同じです。海外産の安い農産物の輸入が進めば、ブランド戦略がこれまで以上に重要になることは疑いありません。

ブランド戦略のメリット

なぜ多くの企業は費用をかけて自社製品のブランド戦略を立て、ブランディングを行うのでしょうか。ブランド戦略にはどのようなメリットがあるのでしょうか。

ブランド戦略のメリットには様々なものがありますが、農業ビジネスの置かれた状況から考えると、主に以下のようなメリットが挙げられます。

①販売の機会増加

商品は顧客に知ってもらわなければ買ってもらうことはできません。そのため、ブランド戦略により、商品の知名度を上げることが必要です。反対に言えば、知名度を上げることで商品が売れる機会を増やすことができます。

例えば、「お米」というだけでは、数えきれないほどの品種のお米がありますが、その中で顧客に選んでもらうためには、まずは知ってもらうことが重要です。そこで、例えば「XYZ米」という名前を付けて広告宣伝をし、知名度が上げることが必要です。知名度が上がれば、販売チャネルも増やすことができ、顧客に買ってもらう機会を増やすことができます。

②リピート顧客の獲得

ブランド戦略を成功させることにより、商品のファンを獲得することでリピート顧客を増やすことができます。農産物は食べ物ですから、味が重要であることは言うまでもありません。しかし、味がよいと言われる同種の農産物がある場合には、顧客は別の商品も食べてみたいと考え、次は別の商品を買うかもしれません。

また買ってもらうために重要なことは、顧客が味だけではなく商品の持つイメージなどに共感をし、商品のファンになってもらうことです。そうすることでリピート顧客となり、継続して商品を買ってくれるようになります。

③低価格競争からの離脱

農業もグローバル化が進んでおり、これからますます海外の安い農産物が日本に入ってくることが予想されます。また、日本国内だけで見ても農産物の種類によってはすでに多くのライバルがおり、価格競争に巻き込まれているという事例も少なくありません。

しかし、低価格競争に勝つためには、規模を大きくして効率化を図るなどギリギリまでコスト削減をしなければなりませんが、海外の低コスト農産物に太刀打ちすることは容易ではありません。

そこで、商品のブランディングを成功させることにより、高くても売れる商品にする必要があります。このようにすることで、低価格競争から離脱することができます。

④事業の拡大

事業の拡大のためには、人材と資金が必要です。ビジネスを進める上で必要不可欠な人材と資金ですが、優秀な人材と潤沢な資金を確保することは簡単なことではありません。そこで、ブランド戦略を成功させることによって、優秀な人材の確保と資金調達をすることができるようになります。

“②リピート顧客の獲得”と同様に、知名度を上げ、ファンが増えることによってその会社で働きたいという人材が増えます。そのため、優秀な人材を獲得しやすくなります。

さらに、上記の①~③のメリットによって会社の成長が見込まれますので、金融機関や出資者からの資金を得やすくなります。

このように、ブランド戦略を成功させることで、優秀な人材の獲得と資金調達が可能となり、その人材と資金によって事業をさらに拡大することができるようになります。

ブランド戦略と法務

自社あるいは自社の商品のブランディングのためにブランド戦略を立て、計画通りにブランディングに成功すれば、様々なメリットが得られます。

しかし、ここで気を付けなければならないのは、この育て上げたブランドを他人に無断で使用されないようにする必要があるということです。ブランディングに成功すると知名度も上がり、ファンも増えますので、このブランドにただ乗りようしようとする者が出てくる可能性があります。

新たな品種のお米を開発し、「XYZ米」という名前で売り出したという例を考えてみます。この「XYZ米」は自然豊かな地域で育てられ、その開発には20年以上にわたる多くの人々が携わらい、努力の甲斐あってようやく出来上がったものです。

「XYZ米」について、この開発ストーリーや豊かな自然のもとで育てられているというイメージのブランディングを行い、そのおいしさだけではなく、イメージにも共感を集めることができたことで、知名度が上がり、多くのリピート顧客を獲得できたとします。

しかし、全く法的な保護について対策をしていなければ、この新品種を使用され、無断で「XYZ米」を販売されてしまうかもしれません。何の法的保護の対策もしてなかったため、無断で「XYZ米」を販売している者に対して、販売を中止させたり、損害賠償請求をしたりすることには困難が伴います。

 

このような事態を避けるために、商標法や種苗法などの法律があります。このような法的保護に関する法律・制度を知らなければ、苦労して開発し、ブランディングをした商品をただ乗りする第三者が乗っ取ってしまうかもしれません。

だからこそ、ブランド戦略を立てるときには、同時に法的保護についての対策も練らなければならないのです。

ブランド戦略立案の際には、法務もその一部として盛り込むことが必須であり、そのためにはどのような法制度があるのか理解しておくことが必要です。

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