農業ベンチャーと法務

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現在、農業は日本の産業の中でも大きく注目されています。そして、農業ビジネスへ参入するベンチャー企業も次々に誕生していています。

農業への参入は、農作物を自ら作るという方法だけでなく、農業に関連する分野への参入という方法によるものも多くみられます。スマート農業のためのシステム提供や農業者と消費者を直接結ぶプラットフォームビジネス、海外進出や六次化などのための農業コンサルタントなどは農業ベンチャーの代表格とも言えるでしょう。

農業ベンチャーの法務の現状

農業ベンチャーの中には大企業の子会社であったり、あるいは(ベンチャーといっても)大企業の一部門であったりということもありますが、多くの農業ベンチャーは創業から間もないスタートアップ企業であり、会社の規模が小さいことが多いのが実情です。

会社の規模が小さいうちは、そもそも事業の売上を上げることが重視されることが多く、管理部門の人員が充実している会社は少ないと思います。特に法務については、法務がなければ会社が動かないというものではありませんので、法務担当部署の設置はもちろん、弁護士等の専門家に依頼することも後回しにされがちです。

農業ベンチャーにこそ法務が必要

このような農業ベンチャーが行っているビジネスは、農業にとって全く新しいことであることがほとんどです。そのため、これまでの慣例や慣習、相場というものが存在していないことから、農業ベンチャーと取引先である農業法人・農業経営者との間では、必ずしも取引内容や契約内容について共通の理解があるとは言えない状況が多々発生します。

そのため、農業ベンチャーと農業法人等で考えていたことが違っており、それが原因で法的なトラブルになることも考えられます。

このような理解の齟齬を防ぐためには、互いの認識を明らかにしてきちんと合意すること、加えて合意内容を書面化しておくことが必要です。

例えば、農作物の生育状況や天候などのデータを採取し、このデータを基に自動で農作業を行うシステムをある農業法人が導入して利用していたところ、農作物がダメになってしまったという事例で考えてみると、農作物がダメになった原因についてどちらが責任を負うべきであるのか問題になることがあるかもしれません。

しかし、このようなシステムがどこでも利用されるようになって経験・実績が蓄積されるまでは、一般的な責任分担の基準が存在していません。そのため、予め当事者の認識を明らかにして一致させておかないと、当事者双方の理解に齟齬が生まれやすく、いざトラブルが起きた際には大きな争いに発展してしまう可能性が高くなります。

このようなことを避けるためには、システムの販売前によく説明と交渉を行い、契約書に責任分担の基準を明記する必要があります。

このように、農業ベンチャーのビジネスの多くは新規性が高く、過去の事例・実績が非常に少ないことから、共通の理解を作るためにも契約書作成などの法務が重要なのです。

農業ベンチャーから農業法務を広める

農業分野においては、まだまだ法務の重要性、必要性が認識されているとは言い難い状況です。

しかし、上記のとおり、農業ベンチャーのビジネスはその新規性ゆえに法務の観点を取り入れることが非常に重要です。

そして、農業ベンチャーが法務を取り入れていくことで農業分野全体に法務の観点が広がっていくことも期待ですます。そうすることで、ビジネスとして法的リスクを回避できるようになるだけでなく、お互いに発展していく関係性を作っていくことができるのです。

 

農業ベンチャービジネスに関わっている方の中には、すでに法務の必要性について十分認識されている方もいらっしゃると思いますが、あらためて法務の必要性を再度確認していただければと思います。

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