農業ビジネスの海外展開

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海外展開

日本の人口は縮小していくことが予想されており、日本国内の農産物マーケットがこれ以上拡大することは望めません。

そこで、国はマーケットの成長が見込めない国内から、マーケットの成長力がある海外に目を向けて、農業法人・農家が農産物を海外に輸出することを推進しています。

すでに農産物を輸出していたり、現地で生産・販売していたりしている農業法人も増えていますが、現在は輸出などをしていない農業法人・農家の中にも、事業拡大のために海外展開を検討している農業法人・農家は少なくありません。

農産物輸出の現状

2016年の農産物(林産物と水産物は含みません。)の輸出額は、4,593億円となっており、4年連続で過去最高を更新しました。

1997年から2016年までの農林水産物の輸出額の推移は以下のとおりです。(農水省HPより抜粋)

 

このグラフからわかるとおり、農産物の輸出額は年々増加しており、現在は約20年前の2倍以上の輸出額となっています。

そして、政府は日本の農業の発展のために農林水産物の輸出を推し進めており、2019年には輸出額を1兆円にする目標を掲げています。

世界では、日本食がブームとなり、日本の食品は安全・安心でおいしいというイメージを持たれています。そのため、現地の農産物に比べて価格が高くても、付加価値のあるものとして富裕層を中心に売れています。

このように、日本食ブームなどの追い風を受けて、日本の農業政策は国内マーケットだけでなく海外マーケットも重視しはじめています。

農業ビジネスの海外展開の方法

農業ビジネスが海外展開をする場合、大きく二つの方法があります。

一つは、日本で生産した農産物を輸出するもので、いわば“メイド・イン・ジャパン”の輸出です。

もう一つの海外展開の方法は、農産物を現地で生産し、現地や日本などに向けて販売するという“メイド・バイ・ジャパン”の輸出です。

農産物輸出=“メイド・イン・ジャパン”

農業ビジネスの海外展開の一つ目の方法は、農産物の輸出です。これは、日本国内で生産した農産物(“メイド・イン・ジャパン”)を海外に輸出するものですので、比較的シンプルな方法です。

もっとも、実際に輸出をするとなると、輸送方法の確保、検疫・通関、現地での流通ルートの確保といった日本国内での出荷・販売とは異なるハードルがあります。

農産物を海外に輸出するためには、これらのハードルを全てクリアする必要があります。しかし、これまで全く輸出をした経験のない農業法人・農家が全てをクリアすることは容易ではありません。

そこで、実際には海外輸出の経験が豊富な商社が間に入り、農産物を輸出することが一般的です。そのため、農業法人・農家から海外の消費者に農産物が渡るまでの間に、2~5社程度の商社や代理店、小売店が関与することになります。

その他にも、海外で販売することになりますので、税務上の取扱いの問題と現地の法律による規制についても注意が必要です。

法務という観点から見ると、農産物を生産した農業法人・農家が直接農産物を販売する商社等との契約の内容は非常に重要ですし、現地の法制度による規制や法的責任について検討をする必要もあります。

現地生産=“メイド・バイ・ジャパン”

農業ビジネスの海外展開のもう一つの方法は、日本の農業技術を利用して海外で農産物を生産し、その農産物を現地で販売したり、日本や近隣国に輸出する(“メイド・バイ・ジャパン”)というものです。

この方法のメリットは、様々な規制によって日本から輸出することが不可能・困難な農産物であっても、現地で生産することで販売することが可能になることと、日本に比べて低い費用で生産することができるため、日本からの輸出に比べて高付加価値商品をリーズナブルな価格で販売できることなどです。

しかし、この方法には、日本の農業法人・農家が農地を取得することができるか、従業員を雇う場合の法規制、実効的な販売ルートを確保することができるかといったハードルがあり、輸出以上に困難が伴う場合も少なくありません。

さらに、進出国によっては、現地生産によって利益を上げることができた場合に、その利益を日本の農業法人等へ還元することができるかという外資規制の問題が浮上することもあります。

現地生産による海外進出は、海外への農産物輸出と異なり、事業を中止することも容易ではありません。輸出であれば、出荷を停止するという方法で事業を中止することが可能ですが、現地生産の場合には現地の農業法人をどのように処理するかといった問題が生じます。

このように、現地生産にはいくつか高いハードルがあるものの、そのハードルを越えることができれば、大きなメリットがあることも事実です。

現地生産による海外進出の成功のためには、事前の事業・マーケットについてリサーチ、検討だけでなく、法規制への理解が非常に重要になります。

コンサルタント・専門家の活用を

輸出(“メイド・イン・ジャパン”)であれ、現地生産(“メイド・バイ・ジャパン”)であれ、言葉や文化、法制度が異なる国に進出するには困難が伴います。

そのため、海外進出の可能性を検討する段階から、海外進出のためのコンサルタントや弁護士といった専門家を活用することが有用です。

そうすることで、海外進出のリスクを把握・回避し、海外進出を成功させることができます。

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